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ミシガン便り

「ハイスクールスポーツ Part 2」

さて、実際の活動の詳細に関してだが、これは息子の属している野球部のことしか分からないので、今年のここまでの野球部の具体的な活動について少し書いてみたい。

野球人間の息子は秋、冬のスポーツには参加せず、春の野球シーズンの到来を待ち焦がれていた。もともと所属しているトラベル・チームの練習はあるが、それ以外は自分で機会と場所を見つけての自主練だけである。

今年の春のスポーツの解禁日は3月11日で、州内のすべてのハイスクールでこの日からトライアウトが行われた。日数は学校によっても違うようだが、数日間かけて選抜が行われる。そしてVarsity、JV、Freshmanのチームが構成され、そこから練習、試合へと入っていく。

ではそれまではどうしているのかというと、大したことはできない。コーチが練習を指導できるのが一度に4人まで、というようなルールがあるらしく、部としての野球の練習はいっさいない。月に一度ぐらいの割合で、みんなで集まってトレーニングをする日があったりもするが、野球をすることは許されていない。

実は冬の間、放課後に4人ずつ集まって屋内でバッティング練習をしていたらしいのだが、これは既にVarsityが確定している子たちのためのもので、新入生は及びでない。ところが息子はラッキーにも、ひょんなことからコーチに「お前も打ちに来い」と声をかけてもらい、年が明けたぐらいのころから少しずつ、先輩たちと一緒に練習をすることができた。

さて、トライアウトで配属が決まると、ほんの数回の練習をしただけですぐに試合に突入する。ポジションの適性とかチームの決め事とか、日本ならば細かな指導がなされたうえで、ということなのだろうが、こちらでは試合をしながらうまくなっていく、という発想なのかもしれない。

ところが今年は例年以上に寒く、氷点下の日が続いたため、試合も次々とキャンセルになった。やっと4月に入ってぼちぼちと始まったかと思ったら、5月半ばにはもうFreshman、JVのシーズンは終了だ。短い。学年末試験の前に時間ができるのはとてもいいのだが…(笑)。うちの場合、息子がどうにかVarsityにもぐりこんだため、もう少しシーズンが続きそうだ。

Varsityはユニフォームも3種類あって、注目度も高く、シーズンも長い。息子は毎日が充実しているし、母としても観にいく楽しみはあるのだが、先輩ママたちとのやりとりでは何かと気を遣うこともある。

毎週金曜日はチーム・ディナー。これも「Varsityは特別」ということらしく、ケータリングがお約束らしい。先日は他の2家族とともにお当番をした。初めてで何も分からない私は事前準備のためのメールのやりとりからかなり緊張したが、イメージしていたのとは違い、カジュアルなものだった。

今回はピザ、サラダ、飲み物、デザート。練習終了後、戻ってきた選手からてんでばらばらに取って食べる。コーチからの一言とか、みんなで揃って一緒にいただきますとか、そういうことはいっさいなく、練習後のスナックのちょっと豪華版、って感じ。

一人の選手がフラッと寄ってきて、"Thank you very much for all of this."とかなんとか言いながら食事を用意した親たちと握手をしていったり、幾人かが帰り際にお礼を言っていったりという感じで、ディナーといいながら「うちに子どもたちが遊びに来て、みんな一緒にピザを食べた」の延長版という感じかな。とはいえ、育ち盛りの上、190cm前後がごろごろいるから負担額は小さくなかったが…(笑)。

そうそう、選手が大きいのも、かなり慣れてきたとはいえ、やっぱりすごいと思う。夫の計算によればチームの平均身長が185cmだということだが、190cmを超える子が何人もいる。

すべての試合が中継されるのも日本とは大きく違う点だろう。中継といっても生徒によるインターネットへの配信だが、立派な機械を持ち込んでメジャー・リーグの中継のようにしっかりした実況・解説をしている。仕事で試合に来られない夫などは、休憩時間に中継が聞けるからととっても喜んでいる。

よくよく聞くと全部の高校でそうなわけではなさそうだ。さらに内容もアナウンサーの力量によるようだ。息子の学校ではJeremy Otto君がフレッシュマンから4年間、野球だけでなくフットボール、ラクロス、バスケの全試合を中継したらしい。ジェレミー君の動画を撮らせてもらってアップしてみたので、ご興味のある方はどうぞ。緊迫した場面ではないので声や雰囲気を楽しんでいただけたら・・・。

http://youtu.be/J7upMnA1QzQ

そういえば、父親の出席率が高いのもアメリカならではだろうか。わが家の「星一徹」は土曜日の試合の終了少し前に息せき切って駆けつけたのが2回あるのみだが、よそのお父さんは平日でもほとんど皆勤だ。ダブルヘッダーの第1試合が始まる4時の時点ですでにかなりの数が集まっていて、5時か6時には毎回ほぼ全員が揃っている。

一度だけ、雨で流れた試合が日曜に延期されて、夫が「今日こそは観にいける」と張り切って出かけようとしたところ、大雨が降ってきて中止の連絡があった、なんてこともあった。

そんなこんなで短いけれど盛りだくさんだったシーズンももうすぐ終わり。野球部全体で行うバンケットや、コーチへのお礼についてのメールも来ている。バンケットって何をするんだろう、コーチへのお礼はどうしたらいいのか…。外国人で新入生で、一から十まで分からないことだらけだ。そうだ、アダムのママに聞いてみよう。

アダムはすぐ近所に住むsophomoreで、今年はJVでプレイした。既に卒業したお兄ちゃんも野球部だったから、ママは何でも分かっていて、何くれとなく助けてくれる。

息子がVarsityでのデビューを果たしたとき、ちょうど私は1週間ほど家を空けていて観にいってやることもできなかったのだが、アダムのママが自分から「送っていってあげるよ」と申し出て試合会場まで連れて行ってくれた。ほぼ同じ時刻に別の場所でアダムの試合があったのに、「たまにはパパとアダムの二人で行くのも悪くないから」なんて言ってうちの息子の試合に行ってくれたのだ。

仕事を終えた夫が大急ぎで駆けつけたのは第二試合の終わりごろ。摂氏でいえば5度を下回る風の強い日だったが、ダウンの上から毛布を巻きつけて震えながらずっと応援していてくれたそうだ。下級生が一人先輩たちのなかに混じってプレイすることで、まわりから冷たい扱いを受けたりしやしないか、そんなことまで心配してくれていたらしい。

子どもたちが小さいころドイツに駐在したこともあったそうで、外国人として異国に暮らした体験もある分、わが家の状況もよく理解してくれている。これだけいろいろと力になってくれたのに、「当たり前のことをしただけ。」とサラリ。「うちにも大変な時期があったから分かるのよ。」という言葉にも作り物のわざとらしさがなく、他人のためになれたことを心から喜んでいる様子。嬉しいし心強いし、そして心から尊敬できる。

大詰めを迎えた息子の野球シーズンだが、このシーズンを通していちばんいい思いをしたのは、実はアダムのママと知り合えた私だったのかもしれない。

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